電子図書館(長尾真)

電子図書館 新装版

電子図書館 新装版

1994年に岩波科学ライブラリーからこの本が出版されたときに一度読んでいます。しかし,その時には,この本に書かれていることの重要性に気づきませんでした。当時はWindows 95が発売される前,ノートパソコンや携帯電話も普及していない状況でした。このような時代に,10年先,20年先に図書館がどうなるか,書籍がどうなるかについて,あるべき姿をきちんと論考しておられる長尾先生の凄さに驚きました。今読めば,すんなりと受け入れられる内容ですが,これが約15年前にかかれた内容だということを意識して読むと,いろいろと考えさせてくれます。

メモ

新装版にあたって

p.vi

本という一つの単位をその中に存在する章や節,paragraphといった任意の単位に解体し,利用者の欲する単位で必要なところだけを提供することである。

p.viii

検索して得られる情報はかならずしも正確であるとは限らない。あるいはどこまで信頼できるものかが分からない。そこで取り出された情報の信頼性を推定したり,その情報に対立している情報が存在していればそれも同時に示すといった研究も始められている。情報検索から事実検索へという動きである。

3.図書館情報の組織化

p.46

新しい電子図書館において取り扱う情報については次のようなことを今後早急に検討しなければならない。
(1) 電子図書館に収納される情報は図書,資料などのように一冊単位かもしれないが,利用のために取り出す情報の単位はさらに細かいものである。何がその最小基本単位かは対象とする図書や資料によっても異なり,うまく設定する必要がある。
(2) 収納された情報が取り出されるためには,その情報へのアクセスパス(取り出し経路)がつけられねばならない。そのために情報の基本単位に対して何らかの取り出しを目的とした情報(タグ)が付与されねばならない。
(3) アクセスパスはできる限り複数個あることが必要である。異なった観点から目的とする情報に行きつくことができねばならない。

5.マルティメディア図書館

p.88

一般的にいって自然言語文で書かれている抄録を対象とするよりは,用語あるいは用語の組み合せである名詞句だけからなる目次部分の方が検索の対象として取り扱いやすいし,目次は章,節,項といった階層性を持っているので,この階層性の情報を利用すればより正確な検索が実現できる。

6.電子読書

p.104

子読書機は次のような機能を含んでいる必要がある。
(1) マルチウインドウシステム
(2) 読んでいる本に対するアンダーライン記入機能,しおりをはさんで次回そこから読みつないでゆける機能,付箋(タグ)をつけてそこにメモを記入することの出来る機能,カットアンドペースト機能など
(3) 読書しながら自分の原稿用紙に原稿を書いたり,メモ帳に自由にメモをとったり,論文を書いたりできる機能
(4) 読書中,あるいは執筆中に,辞書を引いたり,百科事典などを参照したり,またその時点で必要とする図書資料の検索が自由にできること(情報探索読書)