未来思考(朝永正博)
![未来思考 10年先を読む「統計力」 未来思考 10年先を読む「統計力」](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/41IpdCByKhL._SL160_.jpg)
- 作者: 神永正博
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2010/02/05
- メディア: 単行本
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様々な情報や報道に対して,人口推計データに基づく経済学的・社会学的な補足をしています。信頼性の高い統計データ(例えば,国連が1963年に行なった2000年の人口推計の誤差は0.09%!)を用いることで,より事実に即した分析を行なうことができます。報道された情報を鵜呑みにするのではなく,そこで示された統計データの妥当性(バイアスの有無など)をしっかり見据えながら,分析・判断していく必要があります。
メモ&コメント
第1章 日本の少子化,世界の少子化
p.36
社会の安定は,子どもの出生数に大きな影響を与えることが分かります。
現在の少子化問題の原因はこれだけではないと思いますが,産みたいとおもったときに,産める環境があることは重要な要因です。
第3章 産む自由,生まれる義務
p.87
2007年度の調査では,全国で140万人を超える生徒が,就学援助を受けています。
・・・
義務教育の年齢の子供のうち,14%近くが,援助なしに満足に義務教育を受けられない状態なのです。
この数字は私にとっては驚きでしたが,これが格差社会の現実なのでしょう。
第7章 仕事というぜいたく
p.191
理屈の上では,正規雇用の給料を下げて,非正規雇用に回すのが道理です。同一労働の場合,失職のリスクが低い分だけ正規雇用の給料を下げ,リスクが高い分だけ非正規雇用の給料を上げるわけです。
稼ぎたい人はリスクを取ってフリーエージェント化ということなのでしょうが,難しい問題です。安定収入を得たい人が正規雇用にとどまることで,正規雇用を多く抱える企業が衰退していきそうな気がします。
p.192
非正規雇用が増えていること自体が問題なのではなく,「非正規雇用者の待遇が,リスクの割によくないこと」が問題なのではないでしょうか。
第8章 もし世界がひとつの村だったら
p.232
統計を眺めていて気づくのは,「グローバル化が絶対的な貧困を減らす」という事実です。
p.234
世界は全体として不平等になってきているようです。また,総合してみると,格差を拡大する大きな理由はグローバル化ではなく,技術進歩のようです。
人間がこれまでやってきたことが,機械やコンピュータに代替されていくことで,仕事がなくなっていく人が増えていく。代替できない,付加価値の高い仕事へシフトしていける人は少数で,大部分の人が取り残されていってしまう。ということなのでしょうか。
第9章 日本は変わるのか
p.263
成長会計からわかることは,「人口減少の影響はそれほど大きくない」こと,そして,「より生産性の高い産業に資本と労働力を投入する(全要素生産性を上げる)ことで,まだ経済成長できる」ということでもあります。
このあたりは,少しだけ未来に希望がもてるところです。生産性の低い産業から生産性の高い産業への移行がうまく進むかが鍵ですね。