クラウド化する世界

クラウド化する世界~ビジネスモデル構築の大転換

クラウド化する世界~ビジネスモデル構築の大転換

コンピューティング環境の変化を,電力が分散供給から集中供給へ変化したことと対比して説明しています。現状のクラウドコンピューティングの隆盛を見れば,この流れは不可避なものですが,クラウド化が進むに連れて,どのようなことが起こるかが,(悲観的な観点も含めて)述べられています。

メモ

第1章 バーデンの水車

p.18

分散化は,莫大な設備投資と固定費を企業に課す。また,技術そのものの観点からも,設備を動かす労働力の観点からも,不要な支出と過剰設備をもたらす。

いったん一元的に技術を提供することが可能になれば,大規模なユーティリティ供給者が出現して,自家供給者に取って代わるだろう。

ユーティリティが提供する経費削減は,巨大企業にとっても抗いがたい説得力を持つだろう。ネットワークが勝利するのだ。

第3章 デジタル時代のからくり装置

p.68

ほとんどの従業員が,他社のIT部門で行われているのと全く同じ定期保守の作業を行っている。

経済のあらゆる領域でIT資産が過剰に抱え込まれて,コンピュータ化による自動化がもたらしえる生産性の向上を阻害しているのである。

第6章 ワールドワイドコンピュータ

p.141

大企業は,社内コンピューティングへの過去の投資と,ユーティリティがもたらす利益のバランスを取る必要がある。

企業のIT部門にとっての主要課題は,何を手放し,何を手放さないかを,正しく判断することなのだ。

第7章 多数から少数へ

p.162

工業化は一般に,そして電化は特に,工場の効率化を進める一方で,多くの新しい事務作業を作り出したが,コンピュータ化によって奪われた仕事に代わる多くの新しい種類の仕事は生み出されていない。

コンピュータ化は新しい仕事を生み出したが,それは機械で処理できる仕事である。人間は必要とされていないのだ。

p.163

オーターたちが強調しているように,「柔軟性や創造力,全般的な問題解決能力や,複雑なコミュニケーション能力を必要とする業務―いわゆる非定型の認識作業は,今のところコンピュータにその座を明け渡してはいない」。

p.176

ワールドワイドコンピュータが生み出す経済力が要因となって,ますます多くの経済分野で利益が劇的に増加し,技能のあるなしにかかわらず,労働者はソフトウェアに取って代わられ,知的労働が世界規模で取引され,企業がボランティア労働を集約して経済的利益を収奪している現状は,ユートピアとはほど遠いと思わざるを得ない。

第10章 クモの巣

p.229

ワールドワイドコンピュータは,自己表現と自己実現のための新たなチャンスとツールをもたらすと同時に,一部の人々には前例のない能力を与えている。それは,他人の考え方と行動に影響を与えて,その関心と行動を自分たちの目的に沿うように収斂させる能力である。

第11章 iGod

p.275

インターネットの能力,範囲および有用性の拡大がもたらした最も革命的な結果は,コンピュータが人間のように考え始めることではなく,我々がコンピュータのように考えることなのだ。

その結果,我々の意識は希薄になり,鈍化していくだろう。